2012年11月21日

思慮  便宜十六策 第十五


思慮 第十五

 思慮の政とは、近いところを考えて、遠いところを深く思慮することです。

 そもそも人は、遠いところまで考察しなければ、必ず近いところで痛い目に遭います。 君子は、考えるときには、その地位にふさわしいものにします。

 考えるとは、正しく画策することです。考慮とは、物事の計画を考えることです。自分の地位に関わりないなら、その方法について画策しません。自分の仕事に関わりないなら、その計画について考慮しません。重大問題を解決するのはなかなか困難ですが、小さな問題は簡単に解決できます。ゆえに、その利益を考えようとするなら、必ずその損害も考慮します。その成功を考えようとするなら、必ずその万一の失敗のことも考慮します。
 そういうわけで、九階建ての塔は、高いところにありますが必ず壊れるものです。ですから、高い建物を作りあげる人は、その下の基礎となる土台部分をゆるがせにしません。前方に進もうとする人は、その後ろの方をもゆるがせにしません。

 そういうわけで、秦国の君主の穆公が鄭国を討伐しようとしたとき、秦国の百里奚と蹇叔の2人はそれが損害につながることを察知しました。呉王が越国から献上された美女を受けとろうとしたとき、呉国の伍子胥はそれが失敗につながることを察知しました。虞国の君主が晋国から宝石をもらうかわりに晋国の軍隊が国内を通過するのを許そうとしたとき、虞国の宮之奇はそれが損害につながることを察知しました。宋国の君主の襄公が軍隊の強化に乗り出そうとしたとき、宋国の目夷はそれが敗北につながることを察知しました。
 およそ以上のような知恵は、よく考えたり、よく考慮したりした結果です。これこそ「明」と言えるものです。

 そもそも、既に誰かが失敗をしでかしているのに、それと同じ方法を採ったり、既に誰かが失敗に陥っているのに、それと同じことをすれば、どういう結果になるでしょうか。ですから、秦国は、「覇業=覇道(力で天下を制する方法)」を受けついでいきましたが、「堯舜の道=王道(徳で天下を治める方法)」に及ばないのです。

 そもそも安泰からは危難が生じ、形あるものはいずれ滅亡し、よく治まっていてもいずれは乱れてくるものです。君子は、その微かな徴候を察知して、始まりを見ただけで終わりが予想できるので、大事に至らず、災いが起きることはありません。これが思慮の政というものです。


【漢文】
思慮之政,謂思近慮遠也。夫人無遠慮,必有近憂,故君子思不出其位。思者,正謀也;慮者,思事之計也。非其位不謀其政,非其事不慮其計。大事起於難,小事起於易。故欲思其利,必慮其害;欲思其成,必慮其敗。是以九重之台,雖高必壞。故仰高者不可忽其下,瞻前者不可忽其後。是以秦穆公伐鄭,二子知其害;呉王受越女,子胥知其敗;虞受晉璧馬,宮之奇知其害;宋襄公練兵車,目夷知其負。凡此之智,思慮之至,可謂明矣。夫隨覆陳之軌,追陷溺之後,以赴其前,何及之有?故秦承霸業,不及堯舜之道。夫危生於安,亡生於存,亂生於治。君子視微知著,見始知終,禍無從起,此思慮之政也。


posted by navi2 at 07:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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